噛むことで脳がフル回転
歯と歯槽骨をつなぐ歯根膜は、痛覚や温冷覚、触覚などの情報を感知して、脳に伝える役割を担っています。歯根膜を脳とつないでいる代表的な神経が三叉神経です。脳幹から出ている三叉神経は、眼神経(第1枝)、上顎神経(第2枝)、下顎神経(第3枝)の3枝に分かれ、主に知覚を支配しています。歯や歯根膜でキャッチした知覚情報が三叉神経を通じて脳に伝えられると、脳はその情報をもとに咀嚼筋や顎関節を動かします。
歯根膜には、歯根膜受容体というセンサーが多く分布しており、歯を動かすと、その刺激で即座にセンサーが働きます。
つまり食事をすると、食物の温度や味、舌触り、歯ごたえなど、歯根膜がキャッチした情報が、大脳皮質や脳幹に伝わります。例えば、硬いものを食べると、その圧力を歯が感じて、脳が反応し、唾液が大量に出ます。酸っぱいものを食べても同様の働きをします。そういった歯や歯根膜からの刺激は、情報や本能、短期の記憶などを司る大脳辺縁系や、生命活動の維持に関わる視床下部に伝達されます。そのため食事をすると、脳に大量の情報が伝わり、それを処理するために脳はフル回転するのです。また、噛むという行為も、顔や頭の筋肉を動かすポンプの役割をするため、脳に大量の血液を供給し、活性化させます。
もし歯が抜けてしっかり噛めなくなると、このような脳への刺激は激減してしまいます。
すべての臓器の中で、最もエネルギー消費量が多いのは脳です。脳を活発に動かすためには、食事によってしっかりとエネルギーを補給する必要があります。さらに、その際によく噛むことも、脳の活性化を助けることは言うまでもありません。インプラント治療は痛かったり、 腫れたりしませんか?
インプラント手術自体は、麻酔をして行うので痛みの心配はありませんが、骨を大きく造った場合は腫れます。インプラント治療は局所麻酔で十分に麻酔効果が発揮され、術中の痛みは感じません。
しかし、局所麻酔の場合、意識がはっきりと保たれているため、ストレスや不安が強いと血圧や呼吸に影響を与え、体にも負担になってしまいます。そのような方には、うとうとと、まるで眠っているようにリラックスできる「静脈内鎮静法」を提案することもあります。
術後は、痛み止めを出しますので、痛む場合は飲んでいただくようにします。痛みの感じ方には個人差があって、痛み止めを飲む方は10人中2~3人程です。
一方、腫れについては、特に大きな骨造成を行った場合に出るケースが多いです。痛み止めと一緒に処方される抗生剤を、1週間飲んでいただきます。腫れのピークは2~4日目くらいで、そのあとは徐々に治っていきます。人はよく噛むことで元気になれる
歯を食いしばる、奥歯を噛みしめるという言葉があるように、人は最大の力を発揮しようとするときに、歯に力を込めます。例えば、重い物を持ち上げようとするとき、無意識のうちに奥歯を噛み締めているのではないでしょうか。つまり、パワーを発揮する場合は、歯が基点となっていると言えます。
もし、どこかの歯が痛かったり、抜けていたりすると、しっかり噛めなくなってしまいます。奥歯を噛みしめることもできないので、踏ん張りがききません。力が入らないと、何事にもやる気が失せて、体調も今ひとつ優れない状態になることがあります。
さらに、しっかり噛めなくなると、体のエネルギー源である食べ物の消化・吸収にも悪影響が及びます。まず硬い物や、いわゆる噛みごたえのある物は食べられません。食べたとしても、しっかりすり潰すことができず、唾液とも十分に絡ませられないため、消化しにくく、胃腸に負担がかかってしまいます。日本歯科医師会では、ひと口につき30回以上噛むことが推奨されています。その理由のひとつは、咀嚼回数が多いほど唾液を大量に分泌できるということです。
唾液の中には、炭水化物を分解するアミラーゼという酵素が含まれています。このアミラーゼは、よく噛んで、唾液がたくさん出ることでその機能を果たし、胃での消化をサポートします。しっかり噛まず、唾液があまり出ていないと、アミラーゼの働きは不十分になってしまい、胃ですべてを消化し切れないため、その先の十二指腸や小腸に消化の負担がかかってしまいます。そうすると、良質な血液やホルモンを作り出すという、小腸の本来の働きがおろそかになって、体にさまざまな不調が現れます。余談ですが、日本人の腸には昔ながらの製法で作られた発酵食品(納豆や味噌)が合っています。逆にチーズなどの西欧発酵食品は日本人の腸には合わないと言われています。アミラーゼ以外にも、唾液の中には、抗酸化や免疫作用をもつ、リゾチーム、ラクトフェリン、体を活性化する成長ホルモンなど、健康を支える成分が豊富に含まれています。よく噛む行為は、こういった成分の働きを最大限に引き出すための第一歩です。
また、食べ物をよく噛まず、早食いになってしまうと、信号が満腹中枢に到達する前にたくさん食べてしまい、肥満や高血圧の原因にもなります。反対に、ゆっくりよく噛んで食べると、少量でも満足感を得られ、食べすぎを防ぐことができます。
よく噛める歯を保つことは、全身の健康維持に欠かせない条件なのです。インプラントは一生もちますか?
インプラントは、一生もつとは言えません。
インプラント治療によって、失った歯が再生したという風に考えてください。失う前の天然歯と同じで、きちんとクリーニングをしなければ、また歯周病(インプラント周囲炎)になってインプラント体もろとも抜け落ちてしまいます。逆に、毎日しっかりケアして、メインテナンスができていれば、長持ちします。
何しろ口の中には、もともと歯を失った原因の細菌がたくさんいます。メインテナンスが行き届かないと、再感染を起こしかねません。
天然歯は、セメント質、歯根膜にガードされていますが、インプラントの場合はインプラント体と歯槽骨のみ。栄養を運んでくれる血管も少なく、炎症に対する抵抗力が低くなります。
毎日の歯磨きを徹底して行うだけでなく、3ヶ月~6ヶ月に1度程度は、定期検診やプロによるクリーニングを受けることが大切です。また、歯ぎしりや食いしばりの癖があるなど、噛む力が強い方は、インプラントが折れてしまう危険性もあります。その場合は、マウスピースを使うなどして予防するようにしましょう。
さらに、喫煙、糖尿病や、噛み合わせの不具合などもインプラント周囲炎の要因になります。ご自身の健康維持にも気を配っていただく必要があります。
歯周病が全身疾患のリスクファクターに
歯周病にかかった口腔内は、常に炎症が続いている状態です。その際、炎症によって出てくる毒性物質が歯肉の血管から体内に入り、全身を巡って、さまざまな病気の引き金や、悪化させる原因になることがわかってきています。
1989年、フィンランドのK・マイラ博士が、「歯周病と急性心筋梗塞の関係」について研究した論文を発表しました。心筋梗塞に既往歴のある患者と、同じ地域に住む既往歴のない人に歯科検診を行った結果、心筋梗塞の罹患者は、そうでない人よりも3割ほど多く歯周病を患っていたというものです。歯周病菌が血流に乗って全身を巡ると、血管にダメージを与え、プラークを形成して血液の通り道を狭めます。また、プラークが剥がれて血の塊ができると、血管を詰まらせることもあります。つまり、歯周病菌が動脈硬化の一因になる可能性があるということです。心筋梗塞は、動脈硬化により血管が狭くなったり、塞がったりして、心筋への血液供給がうまくいかなくなる病気です。
マイラ博士の研究は、歯周病菌が動脈硬化、ひいては心筋梗塞を誘発することを、数値的に実証したわけです。その後、心臓の動脈疾患で亡くなった患者の頸動脈から歯周病菌が発見されたという報告もあります。
もちろん、歯周病菌が血管にダメージを与えるのは、心臓に限ったことではありません。脳の血管で歯周病菌を含むプラークが詰まれば、脳梗塞につながります。実際、歯周病の人は、そうでない人の2.8倍も脳梗塞になりやすいとされています。
また、大動脈瘤の患者の血管サンプルから、歯周病菌のひとつであるポルフィロモナス・ジンジバリスが高い確率で発見されたという、衝撃的な研究報告もあります。歯周病菌が一旦、血管に入り込むと、口から遠く離れたあらゆる臓器に広がって、悪さをするリスクがあるのです。人間が食べるべき物は歯が教えてくれていた
歯の形は食べ物の種類とも関係が深く、哺乳類の歯は主に何を食べるかによって、進化してきました。
例えば、肉食動物は、肉を割いたり、骨を噛み砕くために、鋭く尖った歯をしています。草食動物の歯は、草をすり潰しやすいように平たい形です。では、人間の歯はどうでしょう。全32本のうち、噛み切る前歯(門歯)は8本で全体の4分の1、食いちぎる犬歯は4本で8分の1、すり潰す臼歯は20本で全体の6割以上。
つまり、ごはんや野菜など、すり潰す機能が求められる物を多く食べるように、遺伝子に組み込まれているのです。逆に言えば、歯の割合から、人が本来食べるべき物のバランスがわかります。
理想の食事は、穀物5:野菜・果物2:肉・魚:1の割合ということになります。ところが、食生活の欧米化もあって、野菜より肉類を多く摂り、脂肪分過多になってしまう人は少なくないでしょう。肥満や生活習慣病は、そういったバランスの崩れた食生活が一因になります。
歯から考えれば、肉類は控えめにして、穀類や野菜をたっぷり摂ることが大切です。特に日本人は、昔から食べてきた米や野菜中心の、脂肪分の少ない食生活が合っています。最近、痩せるために炭水化物(糖質)を食べないようにする「糖質カットダイエット」が注目され、実践している人も多くいます。もちろん主食となる炭水化物を徹底的にカットすれば、痩せることができます。ただしこれは、歯から考える理想的な栄養バランスとはかけ離れたもので、人間は、お米などの穀物をしっかり食べるように進化してきているため、自然の摂理に反することにもなります。長い年月をかけて進化してきた歯の形には、深い意味があるのです。
糖質制限をし過ぎると、ケトン体といって吐き気や無気力になってしまう場合があります。完全に糖質を無くすのではなく、3食のうち、ごはんを夕食のみ食べない、もしくは3食ゴルフボール大の大きさに小さくするなどの工夫をされると良いでしょう。
ごはんには食物繊維が含まれており、腸内細菌のエサになります。ビタミン、ミネラルを摂取するために、七分づき米もおすすめです。歯肉炎から歯周炎へ
歯肉溝にプラークや歯石が溜まり始め、歯肉が炎症を起こし、赤く腫れた状態を歯肉炎といいます。歯肉から出血があり、人によっては口臭がひどくなることもあります。
歯肉炎は、歯肉の下の方にいる歯周病菌と、免疫細胞のバランスが崩れることで、起こりやすくなります。例えば、徹夜やストレスなどで疲れがたまっているときに、歯肉が腫れたり、膿が出たりすることがあるでしょう。
炎症が起こっている場所では、細菌と免疫が激しく戦っています。免疫が低下している状態では、歯周病菌は勢いを増す一方です。そのままだと、ダメージが歯肉だけに留まらず、歯を支える歯根膜や歯槽骨などの歯周組織が壊されていきます。歯槽骨が溶け始めたら、もはやそれは歯肉炎ではなく、歯周炎です。歯周病菌が歯の根元にも巣食って活動し、骨を溶かし始めるため、歯がグラグラしてきます。歯槽から膿が漏れ出すことから、歯槽膿漏とも呼ばれます。
歯肉炎は、必ずしも歯周炎になるわけではありませんが、歯周炎は必ず歯肉炎から始まります。つまり、歯肉炎の段階で何かしら手を打てば、歯周炎に進まずに済むということです。永久歯はなぜ32本あるのか
永久歯は、4本の親知らずを入れると全部で32本あります。上の歯と下の歯それぞれ16本ずつで、前歯を中心に左右対称に並んでいます。
前歯は上下合わせて8本あり、その横に糸切り歯と呼ばれる犬歯が上下左右合わせて4本。その奥には小臼歯が左右2本ずつで上下合わせて8本、一番奥には大臼歯と呼ばれる大きな歯が左右2本ずつ上下合わせて8本、そのさらに奥に第三大臼歯(親知らず)があります。これらの歯の形をよく見ると、1本ずつ違っていることに気づくでしょう。歯には、人間が生きていく上で欠かせない食物を「噛んで消化しやすくする」という重要な役割があります。歯の形がさまざまあるのは、その任務を効率よく遂行するために必要なことだからです。
まず門歯と呼ばれる前歯は、食物を噛み切るのに適した形をしています。
糸切り歯と呼ばれる犬歯は、硬いものを噛み切ったり引きちぎったりする機能があります。犬歯はすべての歯の中で根の長さが最も長く、解剖学的にも横からの力に十分に耐えられるようになっています。そのため、前歯や奥歯を守る役割も大きいのです。
小臼歯と大臼歯は、いずれも食物をすり潰して細かくするのに適した形です。唾液と混ぜ合わせ、胃で消化しやすくする働きがあります。臼歯がないと、胃に負担がかかることになります。女性と高齢者は歯周病菌の餌食になりやすい
歯周病菌である嫌気性菌は、女性ホルモン、特にエストロゲンの影響を受けるとされています。歯周病の中にはエストロゲンを餌にして増殖するものがあります。
一般に、妊娠をすると歯肉炎にかかりやすくなると言われていますが、これも女性ホルモンの影響です。妊娠期は、月経時の10~30倍の女性ホルモンが分泌されるため、それが原因で妊娠中期から後期にかけて妊娠性歯肉炎を起こしやすくなります。
また、妊娠している女性が歯周病に罹患していると、低体重児出産や早産のリスクが高くなることも指摘されています。その危険率は、喫煙やアルコール、高齢出産などよりもはるかに高い数字です。それを予防するために、妊婦歯科検診が存在するのです。さらに、妊娠期以外でも、思春期や更年期、閉経期など、女性ホルモンのバランスが崩れやすい時期も歯周病リスクが高まります。ホルモンバランスが乱れると、自律神経のバランスも乱れるため、免疫力が低下して、血液の循環が悪くなります。そうすると、歯周病菌が活発に活動を始め、増殖を繰り返してしまうのです。
また、免疫力が低下し、抵抗力がない高齢者も、歯周病菌による弊害を受けやすくなります。特に注意が必要なのは、誤嚥性肺炎です。
誤嚥性肺炎とは、食べ物や異物が誤って気管や肺に入り込んでしまうことで発症する肺炎です。通常は、異物が気管や肺に入りそうになると、無意識に咳をして阻止しようとします。しかし、高齢になるとその機能が衰えてむせやすく、食べ物と一緒に飲み込んだ口腔内細菌が誤って、気管や肺へ入り込むことがあります。それが誤嚥性肺炎です。口の中には、実に多くの細菌が存在し、誤嚥性肺炎の原因となるのは、肺炎レンサ球菌と呼ばれる細菌のほか、毒性の強い歯周病菌、緑膿菌、ブドウ球菌などがあげられます。いずれにしても肺炎は高齢者にとって避けたい病気です。
また、口の中の細菌が原因で腸炎を起こす高齢者もいらっしゃいます。抵抗力が落ちている高齢者にとって、歯周病菌をはじめ、悪さをする口腔内細菌は招かれざる客、侵入を防ぐには、まず口腔内からそういった悪玉菌を減らすことが先決です。口臭の原因は9割が口の中にある
口腔内のコンディションがあまり良くないことを教えてくれるサインのひとつに口臭があります。実は口臭の原因は9割近くが口の中にあると言われ、ほとんどが舌苔(舌の汚れ)や磨き残し(歯や歯茎の汚れ)などによる「生理的口臭」と、歯周病や虫歯などによる「病的口臭」のいずれかです。
例えば「胃の調子が悪いと口が臭う」など、ほかの臓器の疾患に起因すると思っている人が多いかもしれませんが、口腔外の原因は、ニンニクやアルコールなど食べた物の影響を含めても1割程度で、逆に言えば、歯周病や虫歯の予防や治療を徹底し、良好な口腔内環境を保っていれば、口臭に悩まされることはないというわけです。
そのほか、唾液の量が少なくなることでも口臭は発生します。特に就寝中は唾液がほとんど分泌されないため、朝起きたときに口臭が気になる人は多いでしょう。また、ストレスや緊張でも唾液の分泌が減少するため、口が乾いて臭いを発しやすくなります。こまめな水分補給や、マウスウォッシュなどの活用も口臭ケアにおすすめです。
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