• 歯を失ってしまったときの治療法

    どんなに予防を頑張っても、歯周病が進行して歯槽骨が溶けてしまったり、虫歯で神経を取った歯が破折したりすると、もはや抜歯するしか方法がなくなります。

    前述のように、歯が抜けた状態を放置していると、噛み合わせが悪くなり、噛む力が著しく低下します。それにより、食べ物をしっかり咀嚼できず、顎の歪み、消化器系への負担、肩こりや頭痛などの不定愁訴など、不調の連鎖に襲われます。

    また、歯が抜けると残った歯に負担がかかるため、ほかの歯を支える骨が壊れたり、虫歯や歯周病のリスクが高まって、さらに歯を失うことにもつながるのです。

    歯を失ってしまったら、そういった周辺トラブルが生じる前に、代わりとなるものを早めに補うことが大切です。
     
    その際の治療法には、入れ歯、ブリッジ、インプラントの3種類があります。それぞれの長所、短所を比較してみましょう。

     

    選択肢①ブリッジ

    ブリッジ

    ブリッジは、失った歯を補う人工歯と、その両隣の歯に被せるクラウン(冠)が一体となったものです。両隣の歯が支柱となることで中央の人工歯が固定されます。入れ歯のように取り外しの必要がなく、自分の歯のように噛むことができます。使用する材質により、自分の歯と同じような外観を取り戻すこともできます。

    ただし、ブリッジの構造上、失われた歯の両隣に歯がなければなりません。例えば、一番奥の歯が失われている場合には、ブリッジはできないのです。

    また、クラウンを被せるために、両隣の健康な歯を削らなければならないというデメリットもあります。歯を削ると、虫歯や歯周病のリスクが少なからず高まってしまいます。また、ブリッジのまん中の歯(ポンティック)には骨がなく、歯肉から浮いた状態のため、噛むときの圧力が両隣の歯に集中しやすくなります。毎日、毎食のことだけに、負担が積み重なって、歯の寿命を縮めかねません。また、ポンティックと歯肉の隙間に食べカスがつまりやすく、清掃しづらいというマイナス面もあります。

     

    メリット

    • 取り外し不要
    • 保険適用診療が可能で経済的
    • 治療期間が短い
    • 材質を選べば見た目も良い
    • 自分の歯と同じように噛める

     

    デメリット

    • 両隣の健康な歯を削る
    • 両隣の歯に負担がかかる
    • 削った歯が虫歯や歯周病になりやすい
    • 食べカスがつまりやすい

     
     
     

    選択肢②入れ歯

    入れ歯

    入れ歯は、大きく分けると、抜けた歯の部分を補う「部分入れ歯」と、上顎または下顎、もしくはその両方のすべての歯を補う「総入れ歯」があります。

    部分入れ歯は、人工歯がついた「床」と呼ばれる合成樹脂の土台と、床を固定するために残っている歯に引っ掛ける「クラスプ」という金属製のバネからなります。

    総入れ歯も人工歯と床からなりますが、掛ける歯が残っていないため、床を歯肉に被せるように密着させて固定します。歯肉にはめているだけなので、安定性が悪く、噛む力が弱くなりがちです。上の入れ歯は、唾液で口蓋(口腔内の天井部分)の粘膜にくっついているだけなので、硬いものを前歯で噛もうとすると外れることがあります。また、下の入れ歯は舌を動かすとずれて、喋りにくくなります。また、異物感は部分入れ歯より大きいです。

    入れ歯は使い続けると、そのうち歯肉が萎縮したり、経年により顎の骨が吸収して合わなくなることがあり、その都度作り替えが必要です。

     

    メリット

    • 健康保険が適用できて経済的
    • 歯をあまり削らなくて良い
    • こまめに清掃できる
    • 広範囲の欠損に対応できる

     

    デメリット

    • 装着に違和感がある
    • 滑舌が悪くなる
    • 長期間の使用で顎の骨が退化するリスクがある
    • こまめに清掃しないと不潔

    選択肢③インプラント

    インプラント

    インプラントは、失った歯の代わりに、顎の骨に人工の歯根(インプラント)を埋め込み、それを土台に人工歯を装着します。骨を削って治療をする外科手術です。

    インプラントが骨に結合されているため、人工歯をしっかり固定でき、自分の歯のように噛むことができます。入れ歯やブリッジのように、残った歯に負担をかけずにすむのも大きなメリットです。

    デメリットは、日本では保険適用外の治療のため、ブリッジや入れ歯に比べて高額になってしまうことでしょう(医療費控除の対象)。ただし、治療対象以外の健康な歯が長持ちする可能性が他の2つの治療法よりも高いため、口腔内全体にかかる費用を長い目で見たときには、むしろメリットに転じ得ます。

    また、外科手術をしなければならないため、治療期間が長くなるというのがデメリットかもしれませんが、最近は、技術が進み、短期間でできる方法の選択肢もあります。

     
     

    メリット

    • 見た目に違和感がない
    • 自分の歯と同じように噛める
    • 周りの歯を傷付けない
    • メインテナンスにより長期間使える
    • 顎の骨が痩せるのを防げる

     

    デメリット

    • 治療期間が長くかかる
    • 費用が高い
    • 施術者によって治療レベルに差がある
    • 全身的な疾患がある方は治療が制限される場合がある/li>
  • 噛める歯を守るための基本は毎日のブラッシング

    咀嚼に欠かせない歯を失わないためには、虫歯や歯周病の原因となる菌や食べカスを口の中に残さないことが大切です。まずは、毎日きちんと歯を磨くことに尽きます。

    1日の歯磨きの回数は、もちろん毎食後がベストですが、個々のライフスタイルや口の中の状態によって変わってくるのは仕方ありません。ただ、虫歯や歯周病をしっかりと予防するのであれば、最低でも1日2回、特に夜は丁寧に磨きましょう。

    実際、1日2回以上磨いている人でも、磨き残しが多いのが現状です。今一度、正しい磨き方を学んで、毎日しっかり実践していきましょう。

    10分かけて、優しく小刻みに磨く

    歯ブラシ

    歯磨きの目的はプラークを取り除くことです。歯と歯肉の間の溝や歯と歯の狭い隙間に残っている細菌を根こそぎかき出すように磨きます。

    そのためには、歯ブラシの先が歯茎と歯の間に入るように、斜め45度にあてるのがポイントです。ブラシを小刻みに動かしながら、隙間の細菌を落としていきます。その際、ブラシを大きく横に動かすのは厳禁です。

    歯はエナメル質と歯肉、骨で守られているので、ここを横磨きすると、歯肉が下がってしまい、歯根がむき出しになるリスクがあり、細菌がつきやすくなります。

    また、強く磨くのもNGで、毛先が曲がってしまい除去率が落ちます。柔らかめの歯ブラシを、鉛筆を持つように軽く握り、10分ほどかけて、1本1本優しく丁寧に磨くようにしましょう。

    歯ブラシが行き届かない部分は、シングルタフトブラシで磨く

    シングルタフトブラシ

    人の歯は形や生え方が一様ではなく、通常の歯ブラシでは磨きづらい部分があります。歯並びが不揃いだと、歯と歯の隙間が広かったり、逆に狭すぎて重なっていたりして、うまく磨けません。また、歯ブラシのヘッドが入りにくい奥歯の後ろなども磨き残しやすい部分です。そういった歯ブラシが届きにくい部分は、ブラシ部分がコンパクトなシングルタフトブラシを使って磨くことをおすすめします。

    歯間部が広い方は、歯間ブラシや太めのデンタルフロスを使うとベスト

    歯間ブラシ

    歯の隙間に挟まった食べカスや、隙間の左右の歯面にこびりついたプラークは、歯間ブラシやデンタルフロスで落とします。歯ブラシの前に行っておくと、歯ブラシの効率も上がります。

  • インプラントをした歯は、違和感があったり、人に気づかれたりしませんか?

    目立ちすぎることはありません

    インプラント

    インプラントの人工歯は、天然歯と同様、歯茎にぴったりとくっ付くように固定されています。部分入れ歯の留め金は付いていないため、目立ちすぎることはありません。

    むしろ、機能性だけでなく、見た目の審美性にも優れていることが、インプラントの魅力のひとつです。

    歯の色、形、大きさ、質感などは、人それぞれ合うものが違います。その点、インプラントは、綿密な治療計画を経て、全体的なバランスを考慮しながらオーダーメイドで作っていきます。だからこそ、ご自身に最もフィットした満足のいく結果が得られるのです。

    しかも、噛み合わせが良くなって左右の顔の歪みが解消できたり、歯が美しくなったことで笑顔が増えたり……と、副産物もたくさん付いてきます。

  • 糖尿病と歯周病の負の相関関係

    糖尿病

    糖尿病も、歯周病と深い関係をもつ疾患です。
    日本の糖尿病患者数は、生活習慣と社会環境の変化に伴って、急速に増加しています。

    厚生労働省の国民健康・栄養調査(令和元年)によると、疾患が疑われる人を含めた場合、5~6人に1人が罹患しているとされる「国民病」です。

    糖尿病は、「インスリンの作用不足によって慢性高血糖をきたし、長期化することで特有の合併症を生じるとともに、動脈硬化をも進行させる病気」(日本糖尿病学会)です。本来、食べ物を消化したり、体内で産生したりすることで作られた糖(グルコース)は細胞のエネルギー源として、血液に乗って全身に行き渡ります。ところが、糖が多過ぎると細胞に取り込みきれず、血液中に糖があふれている状態になります。このように、血管内に糖が多く含まれている(=高血糖)と、血管の壁が傷つきやすく、しかも脂質が血管内に溜まりやすい状態になります。結果、血液が通る道が狭くなり、進行すると動脈硬化になってしまうのです。

    糖尿病の初期は、口が渇いたり、多尿になる程度で自覚症状がほとんどありません。静かに進行し、気づいたときには血管がボロボロになっていて、網膜症、神経障害、腎臓疾患などの合併症を引き起こします。また、血管が狭くなることで、動脈硬化が進行し、ひいては心筋梗塞や脳梗塞を併発するケースも少なくありません。

    糖尿病

    そして近年、糖尿病が歯周病の進行を促すことも明らかになっていて、今や歯周病は「糖尿病の6番目の合併症」と認識されるほどです。つまり、糖尿病があると歯周病が悪化し、その上、治りにくいとされています。
    歯肉は毛細血管がたくさん集まっている場所です。糖尿病が原因で歯肉の毛細血管がダメージを負うと、歯肉の下の組織を通る血流が悪くなって炎症を起こします。その炎症により、歯肉溝が開いて細菌が入って来やすくなります。つまり歯周病菌の感染リスクが高まります。さらに炎症が広がると、歯肉の毛細血管が変性し、歯肉への酸素や栄養成分の補給が不十分になり、歯肉の組織は正常な働きを保つことができません。そのため歯周病が悪化してしまうわけです。

    また、糖尿病で血糖値の高い状態が続くと、いわゆる「糖化」が始まります。糖化とは、体内で、たんぱく質と余分な糖が結びついて、たんぱく質が変性、劣化し、AGEs(糖化最終生成物)という老化物質を生成する反応です。AGEsは分解されにくいため、糖化が進むと、体内のAGEsがどんどん増えてしまいます。つまり、老化が加速してしまうということです。糖化といえば、たるみやくすみ、シミなど、肌の老化の一因として注目されることが多いようですが、実際はそれだけではなく、内臓をはじめとする体内組織に作用して、さまざまな病気の原因になります。歯周病の発症や進行も同様です。

    一方で、歯周病が糖尿病の悪化に関与していることも報告されています。
    東京医科歯科大学歯学部の石川烈教授のグループの研究で、重度の歯周病にかかっている糖尿病患者を2年間観察したところ、糖尿病の治療をしても血糖コントロールがうまくいかなかったという結果でした。ところが、同じ患者に歯周病治療を行ったところ、インスリンの必要量が減って血糖コントロールが改善したというものです。これは、歯周病の炎症が糖尿病の血糖コントロールに影響を与えているということを示しています。

    歯周病と糖尿病は負の相関関係にあります。両方を同時に治療しなければ、どちらの病状も回復しないということが明らかになってきました。近年、医療現場では、糖尿病治療の一環として、歯周病管理を重要視する方針が浸透してきています。

  • 歯ぎしりも噛み合わせの悪さが一因

    歯ぎしり

    歯ぎしりも、噛み合わせが悪いことが原因になると言われています。上下の歯を噛み合わせたまま横に動かすことで、ギシギシと音がします。

    噛み合わせの良い歯だと、噛んだときに上下の歯すべてが同時に接触し、がっちりと噛み合うため、横に多少動かしたところで音はしません。一方、噛み合わせが悪い場合は、どこかの歯だけが先に当たってしまい、そのアンバランスな状態を正そうとして歯をこすり合わせます。無意識のうちに高い歯を削って、噛み合わせの調整をしようとしてしまうのです。

    根の長い前歯・犬歯以外の歯は横揺れに弱く、強い歯ぎしりが歯に与えるダメージはかなりなものになります。エナメル質が傷ついたり、削れてしまったり、詰め物や被せ物にヒビが入ったり、割れたりもします。歯ぎしりのせいで、朝起きた時に歯が痛いという方もいらっしゃいます。

    また、歯ぎしりの最大の原因はストレスと言われています。不安やイライラなどのネガティブな感情を、眠っている間の歯ぎしりで解消しようとするのでしょう。
    ストレスを抱えている上に、噛み合わせが悪いとなると、歯ぎしりによる歯への負荷は倍増します。歯ぎしり癖による歯へのダメージから歯を守るためには、ストレスケアと噛み合わせの調整の両方が必要ということです。

    マウスピース

    ちなみに歯科医院では、歯ぎしりに対し、主にマウスピースを使った治療を行います。型をとって作った自分専用のマウスピースを寝るときに装着し、歯ぎしりの強い力から歯や顎を保護するものです。マウスピースをつけていれば、睡眠中に歯ぎしりをしても、歯がすり減ったり、削れたりすることはありません。

  • インプラントの治療期間や通院回数を教えてください

    症例によって異なりますが、通常3か月~1年程度です。

    インプラント治療は、埋入したインプラント体が骨に結合するまでの安定期間を置くため、ある程度の期間がかかるのです。
    インプラント体の結合期間は、2~6か月です。これに術前処置や、上部構造(人工歯)の作製期間を加えると、3~7か月の治療期間になる計算です。

    インプラント

    通院回数も、1回法か2回法か、オール・オン4のようなワンデイインプラントかなどによって異なってきます。
    ただし、どの手術でも事前の検査や治療計画の確認などで1~2回通院していただき、手術後1~2週間後には傷口の洗浄及び抜糸のために1回、インプラントと骨が結合したあとは人工歯の印象と装着のために2~3回程度の通院が必要になります。

  • 噛み合わせの悪さから不定愁訴や病気に

    噛み合わせ

    残っている歯の数が少ないほど、認知症が進行しやすい理由として、歯が足りないことによる噛み合わせの悪さを報告するデータがあります。

    東北大学大学院歯学科の渡邉誠教授のグループが、70歳以上の高齢者195名の脳をMRIで撮影したところ、歯の噛み合わせが悪く、上下の歯が接する場所が少ないほど、記憶に密接に関係する脳の部位や、計算や思考、空間認識などの高次機能と関係する領域の容積が明らかに減少していることが確認されました。つまり、噛み合わせが悪いと、記憶に関する部分の脳がしっかり働かなくなるというのです。

    噛み合わせの悪さによって体にトラブルが引き起こされるのは、脳だけではありません。
    頭痛や肩こりもそうです。例えば、左右どちらかの奥歯が抜けたままになっていると、噛むときに左右のバランスが崩れます。その状態を放置したまま食事を続けていると、歯が抜けている側とは反対の肩や背中にこりが引き起こります。

    それは、噛み合わせのバランスが悪いことで、体の中心軸を保つ働きをもつ顎関節がずれて、重い頭を支える頭頸部の筋肉を不自然に引っ張り、緊張させるからです。

    また、咀嚼筋の動きにもアンバランスが生じ、それによって、首の筋肉が緊張してしまい、肩や首、背中のこりなどの症状が現れやすくなります。肩の筋肉が硬いと、腰の筋肉も引っ張られるため、腰痛になる人もいます。そのほか、頭痛、不安、落ち込み、イライラなど、なんとなく体調がすぐれない不定愁訴も、歯の噛み合わせの悪さが原因になっている可能性があります。

    歯は噛むことができさえすれば良い、噛み合わせの悪さなんて大した問題ではない、と思っている人は多いかもしれませんが、それは正しくありません。ごくわずかな歯のずれでも、全身の関節、筋肉、リンパ系、体液系に影響を与え、心身にさまざまな症状をもたらすのです。

    実際に、噛み合わせを調整しただけで、不定愁訴が解消したというケースは珍しくありません。噛み合わせが良くなると、顔や姿勢の歪みも解消されます。左右のバランスが整うため、体の中心に重心がくるようになります。重い頭も重心線上に乗るため、体からは無用な緊張が解け、こりも解消されるといった良い連鎖が起こるのです。

    歯が1本抜けただけでも、噛み合わせのバランスが崩れます。放置していると、抜けた隣の歯が傾いてきたり、そのうち対合する歯が伸びてきて歯根がむき出しになってしまいます。結果として咀嚼能力の低下、歯周病、顎関節症などの原因にもなります。
    歯が数本抜けた状態を放置していると、前歯にも影響が及びます。

  • インプラント治療は高いという印象があって、
なかなか踏み切れないのですが…

    長い目で見ると、実はそれほど高いものではありません

    インプラント治療は自由診療のため、健康保険が適用する治療よりも高額にはなります。 ただし、長い目で見ると、実はそれほど高いものではありません。

    インプラント患者の9割以上が、10年以上使い続けているというデータがあり、それだけ寿命が長いということになります。インプラントより低額で治療できるブリッジや入れ歯の寿命はインプラントほど長くありません。しかもインプラントは、失くした歯のみの治療になりますが、ブリッジや入れ歯の場合は、残っている周囲の歯にも影響を及ぼします。つまり、1本抜けても、1本の治療ではすまないということです。

    オールオン4

    さらに、インプラントは、1本の歯に対して1本のインプラント体が必要なわけではありません。むしろ、インプラント体の埋入は少ないほどよく、ほとんどの歯を失った総入れ歯対象の状態でも、オール・オン4など、使うインプラント体をなるべく少なくすることで、費用も抑えることができます。

  • 歯が抜けている人は認知症になりやすい

    認知症

    高齢化社会が加速度的に進み、認知症患者数が増え続ける日本。その数は、約462万人にも及ぶとされています。さらに、その前段階の「軽度認知障害」をもつ人は約900万人、高齢者の4人に1人が認知症、あるいは軽度認知障害と推計されます。

    認知症とは、何らかの原因で脳細胞が損傷を受けて変性し、記憶力や判断力が日常生活に支障が起こるほど低下した状態を言います。
    脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症など、いくつか種類がありますが、社会の高齢化に伴い顕著に増えているのがアルツハイマー型認知症で認知症全体の5~7割を占めています。脳の神経細胞に異常たんぱく質が蓄積して変性し、脳の一部が萎縮していく過程で発症します。情報の伝達機能が低下して、物忘れが徐々にひどくなる症状が多くあります。次いで多い脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によるものです。脳の細胞に血液が十分に行き渡らなくなり、細胞が死んでいくために症状が進行します。
    認知症と歯の健康状態に関して、興味深い研究データがあります。

    「愛知老年学的研究プロジェクト」において、65歳以上の健常者4000人以上を4年にわたって調べたところ、歯がほとんどなく、入れ歯を使用していない人は、歯が20本以上ある人よりも、認知症発症リスクが1.9倍高いことがわかったのです。
    また、名古屋大学大学院医学系研究科の上田実教授がある老人施設で実施した調査では、アルツハイマー型認知症の高齢者の歯の数の平均は、健康な人の3分の1しかなかったことが判明しました。しかも、アルツハイマー型認知症の高齢者は、歯の喪失本数が多いほど、脳の萎縮度が高いということが画像診断でも明らかになっています。つまり、残っている歯の本数が少ないほど、脳の萎縮が進行しやすいということになります。何らかの原因で歯が失われ、治療せずに放置していると、アルツハイマー型認知症の発症リスクは健康な高齢者の3倍になる、と上田教授は結論づけています。裏を返せば、健康な歯を保てている人は、認知症になりにくいと言えるでしょう。失った歯があるなら、きちんと補う治療をすることが、認知症の予防につながります。

  • 噛むことで脳がフル回転

    脳

    歯と歯槽骨をつなぐ歯根膜は、痛覚や温冷覚、触覚などの情報を感知して、脳に伝える役割を担っています。歯根膜を脳とつないでいる代表的な神経が三叉神経です。脳幹から出ている三叉神経は、眼神経(第1枝)、上顎神経(第2枝)、下顎神経(第3枝)の3枝に分かれ、主に知覚を支配しています。歯や歯根膜でキャッチした知覚情報が三叉神経を通じて脳に伝えられると、脳はその情報をもとに咀嚼筋や顎関節を動かします。

    歯根膜には、歯根膜受容体というセンサーが多く分布しており、歯を動かすと、その刺激で即座にセンサーが働きます。
    つまり食事をすると、食物の温度や味、舌触り、歯ごたえなど、歯根膜がキャッチした情報が、大脳皮質や脳幹に伝わります。例えば、硬いものを食べると、その圧力を歯が感じて、脳が反応し、唾液が大量に出ます。酸っぱいものを食べても同様の働きをします。

    そういった歯や歯根膜からの刺激は、情報や本能、短期の記憶などを司る大脳辺縁系や、生命活動の維持に関わる視床下部に伝達されます。そのため食事をすると、脳に大量の情報が伝わり、それを処理するために脳はフル回転するのです。また、噛むという行為も、顔や頭の筋肉を動かすポンプの役割をするため、脳に大量の血液を供給し、活性化させます。

    もし歯が抜けてしっかり噛めなくなると、このような脳への刺激は激減してしまいます。
    すべての臓器の中で、最もエネルギー消費量が多いのは脳です。脳を活発に動かすためには、食事によってしっかりとエネルギーを補給する必要があります。さらに、その際によく噛むことも、脳の活性化を助けることは言うまでもありません。

03-6379-1185

業者様専用ダイヤル(診療予約不可):
090-9950-0885

平日 
09-19時 *お昼休無し(最終受付18:30)
土日祝 
10-13時 / 14-18時(最終受付17:30)

診療時間

〒168-0064 東京都杉並区永福4-1-4
永福ランドビル1F

京王井の頭線・永福町駅 徒歩 1

駐車場完備(所在地はコチラ)
首都高速4号新宿線「永福出入口(IC)」より5分