足りない顎の骨は造成・再生できます

GBR法

インプラント体を埋め込み、安定させるには、骨の厚みが必要です。実際のインプラント体は、直径3~6ミリ、長さが4~21ミリほどあります。それをしっかり支えるには、それぞれプラス2~3ミリ以上の骨が必要になります。

ところが、歯を失ったまま、長い時間が経過していたり、重い歯周病で歯を失った患者の場合、インプラントを埋め込むだけの骨の量が不足していることが少なくありません。骨が十分にないまま埋入すると、後になってインプラント体が脱落したり、周辺が膿んだりする可能性があります。

ただし、骨が足りないとインプラントを諦めなければならないかといえば、そうではありません。今やインプラント治療の技術は、骨が少なければ造成するというところに進化しています。自分の骨(自家骨)、あるいは人工骨(現在はこちらがメイン)を欠損部分に充填し、骨の量を増やす手術(骨造成手術)によって、インプラント治療は可能です。

骨造成手術には、残っている骨の状態や、どのように骨を作っていくかのプランによっていくつか選択肢があります。

GBR(骨再生誘導療法)

GBR法

骨造成手術の基本となるのが、GBR(骨再生誘導療法)と呼ばれる手術法です。人に元々備わる自然治癒力を利用して骨を再生させることで、欠損を治していく方法です。

まずは骨の足りない部分に自家骨あるいは人工骨(骨補填材)を充填し、骨形成を阻害する線維芽細胞などの軟組織が入り込まないように、メンブレンという人工膜で覆います。膜の材料には、骨芽細胞などを活性化して骨組織を再建する生体活性成分が用いられています。

骨欠損が少ない場合は、体内で1、2ヶ月で吸収されるタイプのメンブレンを使用しますが、骨欠損が大きく、たくさん造成させる必要がある場合は、6ヶ月間吸収されないメンブレンを使用します。

個人差はありますが、歯槽骨が再生するには、メンブレンを被せてから3~6か月ほどかかります。骨は常に破壊と再生を繰り返しているため、最初に欠損部分を埋めた骨補填材は、そのうち溶けて、新しい自分の骨に変わっていくのです。

GBR法で骨を充填するタイミングは、インプラントを埋入する手術の前と、手術と同時に行う場合があります。

サイナスリフト

歯科
歯科

サイナスリフトは、上の奥歯の歯槽骨が薄くなっていて、インプラント体の埋入に十分な骨の高さがない場合に適した手術です。

上顎の骨の上部にある小鼻の脇には、上顎洞(サイナス)という大きな空洞があります。そのため、元々、上顎の骨は下顎の骨に比べて薄くなっています。しかも上の奥歯を失うと、歯槽骨は吸収されて更に薄くなり、同時に、上顎洞は下に向かって広がっていきます。

そこで、上顎骨の横から小さな穴を開けて、上顎洞とシュナイダー膜と呼ばれる薄い膜の間に人工骨を入れ、インプラント体を支えられるだけの厚みを作ります。

ソケットリフト

ソケットリフト

ソケットリフトも、サイナスリフトと同様、上顎の奥歯の歯槽骨が薄くなっている方に、インプラント体を埋入するための骨の高さを増やす治療法ですが、サイナスリフトの対象者よりは骨の欠損が少ない方に適応します。

シュナイダー膜までの骨の高さが4~5ミリ以上ある場合はソケットリフト、4~5ミリ以下の方や、失った歯の数の多い方にはサイナスリフトをおすすめします。

ソケットリフトでは、上顎洞の少し手前まで骨を削って穴(ソケット)を開け、そこから骨補填材を入れてシュナイダー膜を押し上げます。十分な量の骨補填材を入れたら、インプラント体を埋め込みます。

サイナスリフトのように、大きく歯肉を切開する必要がなく、骨補填材を入れる穴とインプラント体の埋入口が同じなので、結果、傷口が小さくて済みます。

骨造成の症例

ケース07 大きな骨造成

[治療期間:即日仮歯装着、6ヶ月後にセラミックの装着]

「上顎の骨がなく、歯茎がへこんでいました。水平・垂直の双方に骨がなく、通常の人工骨ではカバーできない状態だったため、右下の顎から自家骨をブロックで採取し、移植を行いました。それにより十分量の骨を確保でき、気にされていた歯茎のへこみも改善。6か月かけて約20%の自家骨が吸収することを予測し、多めに骨増量しています。多すぎた場合は削ることで微調整が可能です」

ケース08 ダブルサイナスリフト

[治療期間:即日仮歯装着、3か月後に下顎、6か月後に上顎完成]

「上顎洞下の骨がとても薄い状態で、且つ、入れ歯が入れられない体質の方だったため、骨をつくると同時に、仮歯を当日に装着する必要がありました。左右の上顎洞に人工骨を入れています。前歯部は水平的に骨がないため、下の顎から自家骨をブロックで採取し、移植を行いました。移植部は負荷を掛けられないため、上顎結節部にインプラントを埋入し、骨が固まるまで仮歯で過ごしていただきました。」