• 人はよく噛むことで元気になれる

    よく噛む

    歯を食いしばる、奥歯を噛みしめるという言葉があるように、人は最大の力を発揮しようとするときに、歯に力を込めます。例えば、重い物を持ち上げようとするとき、無意識のうちに奥歯を噛み締めているのではないでしょうか。つまり、パワーを発揮する場合は、歯が基点となっていると言えます。
    もし、どこかの歯が痛かったり、抜けていたりすると、しっかり噛めなくなってしまいます。奥歯を噛みしめることもできないので、踏ん張りがききません。力が入らないと、何事にもやる気が失せて、体調も今ひとつ優れない状態になることがあります。
    さらに、しっかり噛めなくなると、体のエネルギー源である食べ物の消化・吸収にも悪影響が及びます。まず硬い物や、いわゆる噛みごたえのある物は食べられません。食べたとしても、しっかりすり潰すことができず、唾液とも十分に絡ませられないため、消化しにくく、胃腸に負担がかかってしまいます。

    食事

    日本歯科医師会では、ひと口につき30回以上噛むことが推奨されています。その理由のひとつは、咀嚼回数が多いほど唾液を大量に分泌できるということです。
    唾液の中には、炭水化物を分解するアミラーゼという酵素が含まれています。このアミラーゼは、よく噛んで、唾液がたくさん出ることでその機能を果たし、胃での消化をサポートします。しっかり噛まず、唾液があまり出ていないと、アミラーゼの働きは不十分になってしまい、胃ですべてを消化し切れないため、その先の十二指腸や小腸に消化の負担がかかってしまいます。そうすると、良質な血液やホルモンを作り出すという、小腸の本来の働きがおろそかになって、体にさまざまな不調が現れます。余談ですが、日本人の腸には昔ながらの製法で作られた発酵食品(納豆や味噌)が合っています。逆にチーズなどの西欧発酵食品は日本人の腸には合わないと言われています。

    アミラーゼ以外にも、唾液の中には、抗酸化や免疫作用をもつ、リゾチーム、ラクトフェリン、体を活性化する成長ホルモンなど、健康を支える成分が豊富に含まれています。よく噛む行為は、こういった成分の働きを最大限に引き出すための第一歩です。
    また、食べ物をよく噛まず、早食いになってしまうと、信号が満腹中枢に到達する前にたくさん食べてしまい、肥満や高血圧の原因にもなります。反対に、ゆっくりよく噛んで食べると、少量でも満足感を得られ、食べすぎを防ぐことができます。
    よく噛める歯を保つことは、全身の健康維持に欠かせない条件なのです。

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